漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
11.
消化管、肝胆膵の疾患
文献
奥野聡子, 平山果与子, 井上潤一, ほか. 臨床経験術後悪心・嘔吐(PONV)に対する六君子
湯による予防的治療. 麻酔 2008; 57: 1502-9. CENTRAL ID: CN-00668598, Pubmed ID:
19108494 MOL, MOL-Lib
1. 目的
術後悪心・嘔吐に対する六君子湯の有効性の評価
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験 (RCT)
3. セッティング
病院1施設
4. 参加者
婦人科疾患腹腔鏡手術患者142名
5. 介入
Arm 1: ツムラ六君子湯エキス顆粒 手術当日朝2.5g内服、手術中ツムラ六君子湯坐剤
2個直腸内投与 (坐剤1個にツムラ六君子湯1.5g含有) 、手術翌日と翌々日にツ
ムラ六君子湯エキス顆粒 7.5g/日内服 91名
Arm 2: 非投与群 51名
6. 主なアウトカム評価項目
術後悪心・嘔吐発生率、悪心・嘔吐スコアの推移、術後食事摂取量など
7. 主な結果
術後悪心・嘔吐の発生率で両群間に有意差はなかった。悪心・嘔吐スコアの推移では、
各時期におけるスコアに両群間に有意差はなかったが、六君子湯投与群では術翌々日
の嘔吐スコアが帰室時・術当日・術翌日のいずれのスコアより有意に低く、術翌日の
スコアは帰室時より有意に低かった。これに対して非投与群では術翌々日のスコアが
術翌日より有意に低値であった以外に有意差はなかった。術後食事摂取量については、
六君子湯投与群では、術翌々日の朝にはその夕食と同程度の摂取が可能になっていた
のに対して、非投与群では術翌々日の昼食まで有意に低かった。一方、各時期におけ
る悪心・嘔吐スコアおよび術後食事摂取量において両群間に有意差はなかった。
8. 結論
周術期における六君子湯の投与は術後の悪心・嘔吐の発生頻度を低下させない。しか
し、六君子湯が悪心・嘔吐の程度を軽減し、食事摂取量の早期回復に有効である可能
性が示唆される。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
記載なし
11. Abstractorのコメント
本研究は周術期の諸症状に対する漢方薬の効果を評価した初めての報告であり、内服
できないときに坐剤を用いた工夫がなされている。結果的には有意な差がなかったも
のの、六君子湯の有効性が示唆された。論文中にランダム化自体やその方法が記載さ
れていない点が改善されるべきと思われる。RCT 論文の書き方についての指針である
CONSORT声明に準拠して研究計画を作成するべきである。著者も述べているが、六君
子湯を最低術前 1週間より予防的に服用させておけばもう少し差が出ていた可能性が
残る。また坐剤の場合、投与量がどうしても少なくなるので、たとえば胃管を介して
六君子湯を投与することも考えられたが、抜管時に嘔吐が誘発されることを危惧して、
術当日は坐剤を使用した。しかし、この坐剤は通常用いられず、またこれまでこのよ
うな研究がないために、坐剤のエビデンスは乏しい。今後外科系医師・麻酔科医師に
よるさらなる評価が期待される。 12. Abstractor and date
元雄良治 2010.6.1